その夜はまるで


宝石箱をひっくり返したかのように


幾千の星がきらめいて


何かが起こりそうな


そんな予感のする夜だった。





「1st day 〜出会い〜 」





東京には星が少ないと思う。

それでもこのあたりでは特に星がよく見える、蓮のお気に入りの場所があった。

西岸寺墓地。

まわりに高い建物が無いので見晴らしがよく、その上暗くて静かなところ。

その日もあんまり星が綺麗だったので、蓮はいつもの墓地へ向かっていた。

そこへ行く途中、小さな公園の前を通る。

古びたブランコがあるっきりの、小さな小さな公園だ。

いつもは目もくれずに通り過ぎるだけだった。

しかし今日は何故だか素通り出来なかった。

風も無いのに揺れるブランコ。

よくよく目を凝らすと、一人の少女がブランコをこいでいた。

長い髪、華奢な身体、透き通った肌・・・・・・。




そう。

少女の肌は青白く、本当に透き通っていたのだ。






「貴様は霊・・・地縛霊か?」


蓮が声をかけると、少女はびくりと肩を震わせた。

それから蓮の顔をしばらく見つめた後、おそるおそる口を開いた。


「あなた・・・あたしのことが見えるの・・・?」

「当然だ。俺はシャーマンなのだからな」


えっへん、と胸をそらせて蓮が答える。

しかし少女はきょとん、として蓮を見る。


「シャーマン・・・?」

「あの世とこの世を結ぶ者。霊は俺たちにとって、なくてはならない存在なのだ」

「ふうん・・・」


少女はわかったのかわからなかったのか、曖昧な返事をした。


「まあそんなことはどうでもいい。俺はお前に用があるわけではないからな。俺は行くぞ」


蓮は星を見に来たのだ。

こんなところで油を売ってるつもりはない。

くるりと踵を返した蓮を、少女は呼び止めた。


「待って・・・!」

「何だ?」

「あの、また会える・・・?」


何故・・・と少女に問おうとして、蓮は言葉を呑んだ。

少女は今にも泣き出さんばかりに顔を歪め、そしてそれを必死に堪えていた。


「俺は蓮・・・。貴様、名は何と言う?」

「あたしは・・・」

、か。覚えておく」





それが、彼女との出会い。

特別な会話もしていないし、一目見て彼女に惹かれたわけではない。

けれど、明日もきっとここに来るだろう、と思った。

何故かはわからないが、彼女と会わなければならない気がしていた。

彼女との出会いはただの偶然か。

それとも数え切れないほどの星々が、自分達を導いたのか。

運命というものは本当にあるのだろうか・・・?

漠然とした思いを抱えながら、蓮は空を見上げた。







*後書き*

主人公死にネタ、ならぬ主人公死んでますネタです。
さんはユーレイの女の子。
ヒロインの名前ほとんど出てこないし・・・
切な系になる予定です。切ない話大好きv
タイトルがややネタバレはいっちゃってますが、
全部で7回で終わらせようと思ってます。