「2nd day 〜未練〜 」




その夜はあいにくの曇り空で、星も月も見ることは出来なかった。

しかし蓮は昨日と同じ時間に家を出ると、真っ直ぐにあの公園を目指した。

彼女に会うために。

彼女はやっぱり一人でブランコに座っていた。







蓮の声に、は顔を上げる。



「蓮くん・・・来てくれたんだ・・・」



ぱあっと彼女の顔が明るくなった。



「貴様はいつもここでそうしているのか?」

「いつもっていうか・・・最近・・・かな」



の表情が少し曇る。

が、蓮はそれには気付かない。



「そうか、しかし貴様は何故ここにいる?

 地縛霊というからには、何か特別な未練があったのだろう?」



蓮は何気なく尋ねたつもりだった。

たいしたことを聞いているつもりはなかった。

しかし・・・



「未練・・・か」



呟き、下を向いたの肩は震えていた。

拳を握りしめ、唇をつよく噛みながら。



「未練が・・・無いわけないじゃない。やりたいことがまだまだあったのに・・・。

 見たいものだっていっぱい・・・恋だってしたかったし、夢だって見たかった・・・!

 それなのに・・・それなのに!!全て閉ざされてしまったのよ!!

 あたしは死にたくなんてなかった・・・。もっと生きて・・・生きていたかった・・・っ!!!」



の言葉に蓮ははっとした。

の最大の未練。

それは現世・・・生への未練だった。

彼女の未練は至極当然のことなのかもしれない。

しかし蓮はそれに気がつかなかった。

蓮の周りには死者がたくさんいる。

それは持ち霊だったり、はたまた我が家のキョンシーだったり。

死者や霊は珍しくも何ともないのだ。

そしてそれらの者達がのように、現世への想いを口にするのを聞いたことがなかったから。

“死”というものに対する感覚が麻痺していたのかもしれない。

死ぬことは苦しいもの、悲しいもの。

そんな当たり前のことがどうしてわからなかったのだろう。



・・・」



目の前で泣きじゃくるを安心させてやりたくて、抱きしめてやりたくて。

それなのに何も出来ない自分が歯痒かった。



何も出来ない・・・?

本当にそうなのだろうか。

いや、そんなはずはない。

自分には何か出来ることが必ずあるはずだ。




何故なら自分は・・・シャーマンなのだから。







*後書き*

きり良く一話を終わらせるため、またサブタイトルの都合上
内容すごく短いようです。
その分中盤を長く出来たらなーと思ってます。
なかなか進みませんがラストだけはできています。
裏を返せば中盤できてない・・・