変わらずにいて


変わらなきゃ


変わらないあなたが好き


変わりたい もっと もっと


今のあなたが好きなの


このままじゃダメなんだ


お願い どうか今のままで


君のために僕は―――――強くなりたい




『変わらないもの』




「待ってて、もう少しだから。もう少しで僕はシャーマンキングになれる」


そう言って彼は私に微笑みかける。

昔から変わらない彼の笑顔。だけど・・・・・・


「ねえハオ、もう止めよう?人を傷つけて、殺して、そんなことまでしてシャーマンキングに

 なる価値なんてあるとは思えない」

「何を言ってるんだい。シャーマンキングになれば、全ての人間を滅ぼすことが出来る。

 そうすればシャーマンだけの世界を作ることができるんだよ」

「いいじゃない、人間がいたって。シャーマンじゃなくたって素敵な人はいっぱいいる」


いつからだろう?

昔はハオはこんな風じゃなかったのに。

私が・・・・・・幼い頃の私が弱かったから。

あまりに臆病だったからいけないんだ。

シャーマンだからと人々に蔑まれ、苛められて。

何かあるたびにハオに泣きついては恨み言を言っていた。


「どうしてみんなひどいことするの?あたしは好きでシャーマンになったわけじゃないのに。

 人間なんて大嫌い!みんなみんな大っ嫌い・・・・・・!!」


でも時が経って、私は精神的にも成長した。

人間の友達もたくさんいるし、シャーマンであることに誇りを持っている。

だけどハオは・・・・・・。

人間のせいであたしが傷ついたと。

人間がいるとあたしが幸せになれないと。

その思いに駆られて、どんどんと強く、そして残酷になっていった。


、どうしてわかってくれないんだ。僕はただ君のために・・・・・・」


そう言ってハオは苦しげな顔で私を見た。


あたしのため?

ならどうしてあたしの言葉を聞いてはくれないの?

本当にあたしのことを思ってくれてるの?


ハオに対するあたしの疑問が、ぐるぐると頭の中を渦巻く。

あたしの疑うような、責めるような視線に気付いたハオは、


・・・・・・」


悲しそうに呟いたかと思うと、ふいとあたしに背を向けて行ってしまった。


「ハオっ!」


ああ、あたしはハオを傷つけてしまったんだ。

あたし達はもうダメなのかな。

このまま、二人の気持ちはすれ違ったまま・・・・・・。




あたしはしばらく立ち尽くしていたが、


「・・・・・・謝らなきゃ」


拳をぎゅっと握りしめると、ハオの消えた方向へ走り出した。

その時だった。

突然目の前に立ちはだかった者達がいた。

白の装束を身にまとい、全員が天使クラスの霊を持つ集団。


「]−LAWS・・・・・・!!」

「貴様が一人になるのを待っていたんだよ。汚らわしいハオの仲間である貴様がな」


]−LAWSの隊長、マルコがニヤリと笑いながら言った。


「くっ・・・・・・」


悔しいけれど、あたしの力じゃこいつらにはかなわない。


(逃げなきゃ)


そう思って辺りを見渡すと、既に四方とも囲まれていて逃げ場はなかった。


「無駄だ。貴様に助かる術はない」


マルコが銃を向けた。


「死刑(デス・ぺナルティ)」


いやだ。まだ死にたくない。


「ハオ―――――――っ!!!」






ふわり。

体が軽くなった。

気付くとあたしは宙に浮いていた。

目の前にはハオの顔。

そう、あたしはハオに抱きかかえられていたのだ。

そしてそのハオはというと、スピリットオブファイアの手の上。

ハオがあたしを助けに来てくれた。


が一人になったところを狙うなんて、いい度胸だね」


ハオが不敵な笑みを浮かべる。


「ハオっ!貴様ーっ!!」


]−LAWSが一斉に銃を向け、天使たちを放つが、


「無駄だよ」


ハオはひらりとこれをかわすと、一瞬にして彼らのオーバーソウルを破壊してしまった。

圧倒的な力の差。

ハオはあまりに強かった。

このままでは彼らを殺してしまう。

あたしは無意識のうちにハオのマントを掴んでいた。

それに気付いたハオはあたしを振り返って微笑む。

大丈夫だよ、とあたしを安心させるように。


「今日はこのへんにしておいてやるよ」


と]−LAWSに向かって言うや否や、スピリットオブファイアは高く高く飛び上がった。


「ハオ・・・・・・?」

「僕は自分の考えを曲げることはできない。けど・・・君を悲しませることもしたくないから」

「ハオ・・・・・・」





なんであたしは彼を疑ったりしたんだろう。

ハオは昔から誰よりもあたしのことを考えてくれる。

根本的なことは何も変わっていないというのに。

ハオはこれからも自分の道を阻むものを傷つけていくだろう。

でも、それでもあたしはハオが好きだ。

今あたしがハオのそばを離れてはいけない、と思う。

一人にしてはいけないと。

ハオをすぐに止めることはできないかもしれない。

でも、あたしにもできることはきっとあるはず。

ときには彼を諌めて、ときには彼を励まして、ずっとずっとそばで彼を支えていたい。

そんな想いがあたしの中で固まったとき、あたしはハオを後ろから抱きしめた。


?」

「ハオ、あたしはいつだってあなたの隣りにいるんだから。覚えておいてね?」


あたしわかったの。

時がたっても、変わらないものがあるってことを。

あたしはあなたを一人にはしない。

だからいつまでも、ハオはハオのままでいて。

あたしのこの想いも、永遠に変わらないから。







*あとがき*

最初、悲恋ものになりそうな感じでした。
二人の想いはすれ違い、ヒロインの死によって
ハオが失ったものの大きさに気付く・・・みたいな(何じゃそりゃ
でも基本的にハッピーエンド主義者なもので(悲恋も好きだけど)、
こういう結果になりました。
なんか書いてるうちにだんだんヒートアップしていっちゃいました。






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