|
『市場へ行こう』 「おーい誰か!ちょっと来てくれ!」 王宮内で声を張り上げている、蜂蜜色の髪をしたこの男。 名前をアラン=ケイザー=ラボトロームという。 ラボトローム国の第六王子である。 「おーい、誰かいないのか!」 おかしい。 いつもなら、声をかければすぐにグーナーがやってくるのに。 グーナーでなくとも、誰か一人くらい側近の物が来てもいいはず。 それなのに誰一人としてやって来ない。 それどころか返事すらない。 (どうしたんだろう・・・) アランが不思議に思っていると、廊下の方からバタバタと大きな足音が聞こえてきた。 足音はアランのいる部屋のドアの前で止まった。 そしてバタンッとこれまた大きな音をたててドアが開いた。 「おっ、遅くなってすみませんでしたっ!!」 見慣れぬ顔の侍女が、肩をゼハゼハいわせながら立っていた。 「えっと君は・・・?」 「はっはい!私は先日からこのお城で働かせて頂いてるです!!」 「どうりで見たことのないこだと思った。ところで、 グーナーを知らないかい?」 はまだ息も絶え絶えな様子で答える。 「グ、グーナーさんでしたら奥様が風邪をこじらせてしまったとかでご実家に・・・」 「そういえばそんなこと言ってたっけ・・・。それじゃあスマートは?」 「ゴルディオン様は朝からどこかへ遊びに行ってらっしゃいます」 アランは大きくため息をつく。 「・・・他の者は?」 「他の方たちも、お子さんがお生まれになったとか、足を骨折して自宅で療養中とかで・・・ アラン王子おつきの方は誰もいらっしゃらないのですが」 「誰も?」 「はい、誰も」 きっぱりと返すの言葉に、アランはその場にしゃがみこんでしまった。 (そりゃ僕は第六王子ではあるけど、でも一応王子なんだから誰もいないなんてそんな いくらなんでも・・・) アランがぶつぶつとつぶやいていると、が心配そうに声をかけてきた。 「あのーアラン王子、何か御用がおありでしたら私がお引き受けしますが・・・」 アランを見下ろすの視線と、を見上げるアランの視線とがぶつかった。 「そうだ!」 アランは勢いよく立ち上がるとの手をつかんで言った。 「、市場へ行かないかい?」 「へ?」 あまりにも唐突に言われたので、はきょとんとした顔でアランを見つめる。 「市場・・・ですか?」 「うん。ちょうど城下の町で市を開いているところなんだ。 賑やかで楽しいものだよ。言ってみないかい?」 「はあ。それは大変光栄なことなのですが・・・でもよろしいんでしょうか。 その・・・私なんかと」 は微かに頬を染めて言った。 「君はまだ城の周りのことを良く知らないだろ?町中に出て様子を知ることも 王宮の者達の大切な仕事だと思わないか?」 整った顔に極上の笑みを浮かべて言われたら、が断れるはずもなかった。 アランの言ったとおり、市場は大変な賑いをみせていた。 初めての市場には目を輝かせた。 「アラン王子ー!!ちょっと来て下さい!!」 「見て下さいアラン王子!あれ何なんですか!?」 王宮にいたときとは別人のようにはしゃぐに、アランは声をかけた。 「一応お忍びで来てるんだから、僕のことを王子と呼んではいけないよ」 「あ、すみませんっ!ではなんと・・・」 「呼び捨てで構わないよ」 「え、でもそれは・・・じゃあ・・・アラン様で」 「それなら」 大して変わらないけどな、と思いつつアランは苦笑して答える。 市場がよっぽど珍しいのか、の勢いは止まらなかった。 走り回っては次々と店をまわり、しばらく品物を眺めてからまた走り出す。 まるで子どものようだ。 「、走り回っていては危ないよ」 「きゃっ!!」 アランが注意したのと同時に、が短く叫んだ。 言ってるそばから転んだらしい。 「大丈夫かい?」 「あ、足を・・・」 立ち上がろうとするがすぐによろけてアランの肩にしがみついた。 「す、すみませ」 「しょうがないな」 そう言ってアランはを軽々と抱き上げた。 「きゃ、え、あのっ」 「歩けないんだろ?」 アランはそのまま平然と城に向かって歩き始めた。 は黙りこくってしまっている。 「?」 覗き込んだの顔は真っ赤だった。 「どうした?」 「王子様にこんな風にしてもらうなんて・・・まるでお姫様みたいで・・・。 それにアラン様の顔がこんな近くにあるものだから・・・」 それだけでこんなに真っ赤になってしまう純情な少女を、心底可愛らしいと思った。 アランのまわりには何故だか気の強い女性が多い。 元婚約者、お見合い相手、隣国の女王様・・・・。 いい年して結婚相手もいないで、とグーナーがよく嘆く。 (あーあ、どこかにこんな素直で可愛いお嫁さんはいないかなー) そんなことをちらりと思ったりもしたけれど。 今は、昔恋してた人の子供が可愛くて仕方がない。 そういうことはまだ当分先の話だ。 あれこれ考えているうちに城が見えてきた。 アランの不在に気付いた城の者が総出で出迎えている。 「また、いつかね」 そっとに耳打ちして、彼女を城の者に預けた。 後日、アランは共の者もろくにつけないで、とグーナーに叱られたとか。 *あとがき* 初書きちょードリ。お相手はアラン王子。 ・・・全然ドリーム小説になってません。 夢見られない・・・。 一応お姫様抱っこが書いてみたかったのですが。 難しいですねー、ドリーム小説って。 精進します。 ブラウザバックお願いします。 |