|
「え・・・今なんて・・・?」 は思わず自分の耳を疑った。 「お前を愛している、と言ったのだ。」 「嘘・・・」 「嘘ではない。世界中の誰よりも、お前のことを愛している」 「嬉しい・・・!!あたしも、ずっと前から蓮くんのこと・・・」 辺りには誰もいない、静かな夜の公園。 月の光が二人の顔を照らす。 「・・・」 蓮の手がの頬をそっと包み込んだ。 「蓮くん・・・」 蓮の顔がゆっくりと近付いてきて・・・は黙って目を閉じた。 『蓮愛のススメ』 ・・・!!! 「ふわぁっ!?」 自分を呼ぶ声に慌てて目を開けると、目の前にあったのは蓮ではなくアンナの顔。 「あ・・・あれ?蓮く・・・」 「!あんたいつまで寝てんのよ?」 「え・・・何だ、夢かぁ・・・。あーん、いい夢だったのに!!」 「ぐだぐだ言ってないでさっさと仕度しなさい!みんな待ってるんだから」 「はーい・・・」 幸せな夢の余韻に浸っている暇もなく、はしぶしぶと起き上がると 顔を洗い、身支度を済ませて皆のいる部屋に行った。 朝食の準備は当に出来ており、以外は全員揃っていた。 「遅いぞ、飯が冷める」 の姿を認めるや否や、蓮の声が飛んできた。 「ごめんねー」 が席につき、皆で一斉にいただきますをして食べ始めた。 食べながらは蓮の顔を横目で見る。 (ああ・・・それにしても今朝の夢はオイシかったなー。あれってもしかして正夢? うわー、そうだったらどうしよう!!) 「」 「えっ!な、何?蓮くん」 「・・・それは美味いか?」 「も、もちろん!すっごく美味しいよ!!」 急に蓮が話しかけてきたものだから、の言葉にも力がこもる。 「そうか、ならいいが」 蓮はふっと軽く笑うと、また黙々と食べだした。 (蓮くんがあたしに笑いかけてくれたわー!!) は心の中でガッツポーズをし、ささやかな喜びに浸った。 ぼーっと妄想にふけっていたために、自分が味噌汁に納豆とマヨネーズを ブレンドしていたことなど、は微塵も気付いていなかった。 朝食が終わり、皆は思い思いの場所に散る。 そんな中は一人で宿の一室に寝転んで考え事をしていた。 (ああ、それにしても今朝は恥ずかしかった。 きっと蓮くんはあたしのこと、 バカな奴だって笑ったんだわ。 たまおが教えてくれなかったら、あたしはずっと 気付かなかったかもしれない・・・。 このままじゃ絶対あの夢みたいなことにはならない。 ・・・自分から行動を起こさなきゃ!!) は勢いをつけて起き上がった。 (よーし!そうと決まれば即行動開始!) 窓の外に蓮の姿を見つけ、急いで外に飛び出した。 「蓮くーん!ちょっと待ってっ!」 「か、何か用か?」 馬孫を引きつれ、今まさに修行に向かわんとする蓮を呼び止める。 「あ、あのね、大切な話があるんだけど・・・」 「悪いが俺は修行で忙しい」 「今じゃなくてもいいの。今夜・・・そうね、夕食後に宿の裏手にある木のところ まで来てくれない?」 「別にかまわんが・・・」 言いながらも蓮は怪訝な表情を浮かべている。 「忘れないでね。じゃあまた!」 は用件だけを告げると、またすぐに宿へと戻っていった。 それから一日中、は何をしていたのか覚えていない。 ただ蓮のことで頭がいっぱいだった。 そしてあっという間に時間は過ぎてゆき、夕食の時間はやってくる。 は皆が集まったのを見計らって、猛スピードで夕飯をたいらげた。 「、何そんなに急いでんだよ?」 空になった皿を目にし、半ば呆れてホロホロが尋ねる。 「こ、こ、心の準備がっ!」 意味不明の言葉を残し、は部屋を出て行った。 「何だ?あいつ」 ホロホロは首を傾げて、の出て行った方を見つめた。 蓮はそのやり取りを見ながら黙々とご飯を食べていた。 「はぁー、緊張する・・・」 は待ち合わせの木に身をもたれかけさせて胸を押さえた。 空には糸のように細い三日月。 無数の星が煌めく静かな夜。 「きっと大丈夫だよね!星たちが見守ってくれてるもの!」 は拳を握りしめ、天に向かって突き出した。 ちょうどそのとき蓮が現れたので、は慌てて拳を下ろした。 「れ、蓮くん!」 「・・・そんなに急ぎの用だったとは知らなかった。遅れてすまんな」 「へ?」 「すごい勢いで夕飯を食べていただろう?」 「そ、それは・・・」 の顔が真っ赤になる。 こんなんじゃムードもへったくれもあったものじゃないが、 蓮を呼び出した以上今ここで想いを告げるしかない。 「蓮くん、話を聞いて!あたし前から蓮くんのことが・・・」 いったん区切って大きく息を吸い込む。 (よし、言うぞ!) 「す」 「坊ちゃま!!おめでとうございます!!」 好き、と言おうとして突然出てきた馬孫に言葉を遮られた。 何故だか馬孫は紙ふぶきを撒き散らしている。 「ば、馬孫・・・?あなた何の恨みがあってあたしの邪魔を・・・」 青白いオーラを発しながら、は静かな口調で言った。 「あ、いえ、坊ちゃまにもついに春が来たかと思うと嬉しくて・・・ ここはこの馬孫、盛大にお祝いしなくてはと・・・!」 馬孫は何故が怒っているのかわかっていない様子だった。 「馬孫はあっちに行ってて!二人きりになりたいの!」 怒りをあらわにして馬孫を追い払う。 (こ、今度こそ!) 「蓮くん、あたし」 「待て」 今度は蓮だ。 ことごとく邪魔をされ、ため息の一つもつきたくなってくる。 「蓮くん、何・・・」 「人に聞かれてはまずい話なのだろう?」 「まあ・・・あまり聞かれたくはないけれど」 「ならこいつらは邪魔だな」 そう言って蓮はおもむろに馬孫刀を取り出すと、近くの草むらに突き刺した。 「さあ、出て来い!」 崩れこむように出てきたのは、葉達だった。 いつのまに隠れていたのだろう。 全く気がつかなかったは目を丸くした。 「貴様ら、ここで何をしている」 蓮が皆を見下ろす。 「オイラはホロホロがおもしろそうだって言うから・・・」 「な、オレはアンナが蓮のくせに生意気だって言うから!」 「呼び捨てにしないで、ホロホロ」 「フッフッフー」 「ちゃ〜ん!蓮なんかやめてオレのベストプレイスになってくれぇぇぇ〜!!」 「すみませんすみませんすみません」 アンナが前鬼と後鬼でホロホロを吹っ飛ばし、怪我をしたホロホロにファウストが嬉しそうに近付き、 竜は何故か泣きながら絶叫し、たまおはひたすら謝り続けた。 皆が好き勝手なことをし出し、収拾がつかなくなってしまった。 「えっと・・・どうしよう・・・」 呆れて物も言えずにはその場に立ち尽くした。 そんなに蓮が声をかける。 「これでは話をするどころではないな。・・・このまま散歩でもするか?」 「でも・・・」 はちらりと葉達の方に目をやる。 しかし皆を気にする素振りを見せながら、内心は蓮の言葉に心躍らせていた。 「こいつらは放っておけ。行くぞ」 そう言って差し出された右手に、そっと自分の右手を重ね。 月明かりに照らされた夜道を、二人は歩いていった。 *後書き* 2900HITの空陸海さんのキリリクです。 終わり中途半端な気が・・・。 とりあえずこの後二人はデートに行きました。 蓮くんに自覚はたぶんなしですが。 ドリーム小説なのにヒロインちょっと変な子でごめんなさい; |