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『Special Girl』 キーンコーンカーンコーン。 休み時間になると、とたんに廊下には生徒達が溢れ賑やかになる。 「トールー!!」 一見女の子と見間違えてしまいそうな容姿の小柄な少年が、 勢いよく駆けて来て透の背中に身を隠した。 「紅葉くん?」 「トール!隠して隠してー!!」 あとから少女が追いかけてきて、透のうしろを覗き込む。 「紅葉見ーっけ」 「えへへー、見つかっちゃったのー」 紅葉が出てきてちらりと舌をだす。 「仲がよろしいのですね」 透が微笑むと紅葉が嬉しそうに 「うん!あ、紹介するね。この子は。ボクたち同じクラスなんだよ」 「あ、こんにちは」 、と呼ばれた少女が透の方を向き、ぺこりと頭を下げた。 「初めまして。私、本田透と申します。よろしくお願いしますね」 透は丁寧に挨拶を返した。 「トールっ、ボク今日またシーちゃんちに行くことになったのよー」 「わぁ、そうなのですか。嬉しいですー」 透と紅葉はとても楽しそうに話をしている。 が、にはそれがつまらない。 「ねぇもみ・・・」 「あっ、次の授業は移動教室なのです!そろそろ行かなくては」 「えー、トールもう行っちゃうのー?」 「はい、うおちゃんとはなちゃんが待っていますので・・・ また時間のあるときにいっぱいお話しましょうね」 慌ただしく透が去って行く。 彼女の後ろ姿を見送りながら、紅葉がぽつりと呟いた。 「はトールのことが嫌い?」 「え?」 唐突に問われた言葉に、は戸惑いを隠せない。 「そ、そんなことないよ。なんで?」 「だって、さっきからつまらなそうな顔してる・・・」 「それは・・・」 別に嫌いなわけではないのだ。 透さんはとても優しそうな人。 温かな笑顔の素敵な人だと思う。 彼女のことが嫌いなわけではなく、これはただの・・・ 「ヤキモチ?」 紅葉がひょいとの顔をのぞき込んで言った。 どきっ。 の心臓が飛び跳ねる。 幼い外見に似合わず、紅葉は鋭い。 「なーんだ、そうだったのね。良かった」 の表情を見て図星だとわかったのか、紅葉はほっとしたように胸を撫で下ろした。 あたしは良くないわ、は心の中で呟いた。 さっきから話題は透さんのことばかりじゃない。 「なんで紅葉はそんな嬉しそうなのよ?」 は紅葉に尋ねた。 「だって大好きな人のことを嫌いって言われたら悲しいでしょ? だからがトールのこと嫌いじゃなくて良かった」 大好きな人。 その言葉がの胸にちくりと突き刺さる。 「紅葉、透さんのこと好きなんだ・・・」 自然との声のトーンが下がる。 「うんっ!透はすごく優しいしそれに・・・ボクらにとってトクベツな人だから」 「トクベツ・・・」 これ以上話していても、紅葉は透さんのことしか話さない。 そう思ったは先に教室に戻ってしまおうと思い、紅葉に背を向けた。 けれど紅葉の次の言葉では足を止めた。 「でもね・・・はもっとトクベツ」 何をいまさら・・・と思いつつもは振り返る。 「何が特別なの?」 「だってね、ボク、のこと好きだもん」 そう言って紅葉はを見上げた。 「そうね、あたしも紅葉のこと好きだよ」 はそう言ってポンと紅葉の頭に手を置いた。 紅葉は誰にでも同じようなことを言っている、と思って真面目に取り合わなかったのだ。 けれど紅葉の顔は真剣そのもので、は思わずその手をどけた。 「子ども扱いしないで。ボクは本気」 「紅葉・・・で、でもっ、さっき透さんのこと・・・!!」 「言ったでしょ?はもっとトクベツなんだって。ボクはが好き。 今まで感じたことのない気持ちだけど・・・でもこの気持ちは本物。 ・・・どうしたら信じてくれる?」 自分は告白をされている、という事実にはようやく気がついた。 「え、えっと、その・・・」 慌てふためくを見て、紅葉はふっと微笑んだ。 それからの肩に手を置くと背伸びをし、の頬に軽くキスをする。 「っ!?」 「待ってて」 「え」 「今はまだ背も低くて、を守ることはできないかもしれないけど。 すぐにを追い越してに認めてもらえるようになってみせるから」 今まで見せたことのないような強い瞳で、真っ直ぐにを見た。 「わかった。・・・けど、あんまり遅くなったらあたし浮気しちゃうからね」 「ええー、それはダメー!!」 「だったらあたしをあんまり待たせないでよ?」 あたしも頑張らなくっちゃ、は心の中でそっと呟いた。 紅葉が素敵な男性になったときにあたしもそれにふさわしい女性になってないとね。 なんたってあたしは紅葉のトクベツなんだもの。 目指せ!Special girl!! *後書き* うわーどうしよう・・・ 史遠さんとの相リンドリ、ということでウキウキで取りかかったはずなのですが・・・ 何と言うか終わり方無理やり! というか休み時間長過ぎ!(爆 とツッコミどころ満載でお送りしております; あんな素敵なドリ頂いておいてお礼こんなのだと、あきらかに不公平。 でも押し付け!(え ええとかなり遅くなってしまいましたが受け取ってくださいませ。 |