『ふんばりが丘より愛をこめて 2』



ツッコミを終えたまん太は、満足そうに胸を張った。

そしてあたし達に向かって指をずいと突きつけ、


「それに何だって僕の名前を知ってるのさ!?」


と詰め寄った。

どうしよう、とがあたしを見る。

けどそんなことよりあたしは早く炎に行きたくてしょうがない。


「それは後で話すから!とにかくあたし達を炎に連れてってよ」


なかば強引にまん太に道案内をしてもらうことになった。

まん太がぶつくさ文句を言っているけどそんなことは気にならない。

まさか本当に炎に行くことが出来るなんて、夢みたいだ。


「着いたよ」


まん太の言葉に我に返ると、いつのまにか古くて大きな一軒家の前に来ていた。


「これが炎・・・」

「うわーすごーい、大きいねー」


も感動したように声をあげてる。

まん太はそのまますたすたと敷地に入っていった。

あたし達は慌てて後に続いた。

そしていよいよ玄関の前。

まん太が玄関の戸を勢いよく開ける。


「こんばんはー、葉くーん、アンナさーん」


まん太の声に、しばらくすると中から誰かの歩いてくる音がした。

緊張にあたしとは身をこわばらせる。


「まん太、遅かったわね」


来たー!!!

肩まで伸ばした栗色の髪、黒いワンピースに首から数珠を下げている少女。

アンナだ。


「あんた達、誰?」


アンナが鋭い目であたし達を見た。


「あたしは

「あの、あたしはです。よろしく」


はペコリと頭を下げた。


「で、何の用?」

「えっと、それは・・・」


しまった。何も考えてなかった。


「用は無いの?ならさっさと帰・・・」

「待って!あたし達道に迷っちゃって」


がとっさに嘘を吐いた。


「駅までなら送るわよ、まん太が」

「そーじゃなくてー、うんとー」


はいい言い訳が思いつかずに困った様子。

そこであたしは横から助け舟をだした。


「あたし達、事情があって家に帰れないの。だから・・・ここに泊めて!!」


自分でも上手い言い訳だとは思わない。


「・・・別にいいけど」


いいのか!?

アンナは嘘みたいにすんなりとOKしてくれた。


「そういえば葉くんは?」


ふいにまん太がアンナに聞いた。

実はあたしもさっきから気になっていたんだ。


「葉ったら夕食の時間だっていうのに、まだ帰らないのよ。あんた知らないの?」

「僕は知らないよ」

「ふーん、ったくどこほっつき歩いてんのかしら!!」


うわあ、どうやらアンナはご機嫌斜めらしい。

いろいろ聞きたいことがあったけど、今はやめておこう。

ところがアンナの方からあたし達に話しかけてきたのだ。


「あんた達・・・」

「「はい!」」


あたしとは同時に返事をした。


「晩ごはんの仕度、お願いね」

「なんであたし達が」

「まさかただでウチに泊まれるとでも思ってたの?働かないんだったらお金とるわよ」


どーせそういうことだろうと思った。

アンナが何の条件もなしに泊めてくれるわけないって。


「あたし家で結構手伝いしてるから大丈夫だよ」

「じゃーにまかせるー」


あたしは家事とか得意じゃないんだから。

とにかく晩ご飯を作らされる羽目になったあたし達は、まん太と一緒に台所で料理を始めた。

アンナはというと、ただ座って晩ご飯が出来るのを待っているだけ。

料理が出来上がると、あたし達はこたつを囲んで食べ始めた。


「葉くん、ほんとに遅いね。・・・もしかして修行が辛くて逃げちゃったんじゃないの?」


まん太がぽつりと呟く。


「葉は逃げたりしないわ。だってあたし、葉がシャーマンキングになれるって信じてるもの」


きっぱりと言い放たれたアンナのセリフ。

あたしは妙な違和感を感じた。


「葉は他のガツガツした奴らと違う。何があったって葉は葉でいられるもの。

 だからあたしはそんな葉を愛してる」

「愛・・・!」


アンナをぬかした全員が赤くなった。

そのときもまたあたしは変な感じがした。

このセリフ、やりとりをあたしは予測できた。

何故なら前からこの光景を知っていたから。

何度も何度も見たことがあったから。


(もしかしてあたし達はただふんばりが丘に来たっていうだけじゃなくて・・・)


そこへ、玄関の戸をガラリと開ける音がした。

その人物の登場で、あたしの推測は確信に変わる。








*あとがき*
炎に泊まってみたいという願望はありますが、幽霊でるんだったら私には無理です;
次はいよいよ○○○が登場予定。
ちゃんお疲れ様です。次はちゃんにバトンタッチ!




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